後悔しない移転先オフィスの選び方と入居時の注意点

オフィスの移転は何から始めればいい?移転先の選び方や退去時のポイントを解説


オフィスを移転する際や、初めてオフィスを借りる際に大切なのがオフィス選びです。どのようなオフィスを借りるかによって仕事が快適にできるかどうかが左右され、さらに仕事の効率や業績が大きく違ってくると言っても過言ではないでしょう。

しかし、オフィス選びは日常でそう何度も経験することではないため、とりあえずや何となくで選んでしまったり不動産会社任せにしてしまうと、移転してから後悔することにもなりかねません。

そこで、この記事では移転先のオフィスの選び方や注意点などについてわかりやすく説明します。初めてオフィスを借りる場合やこれからオフィス移転を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

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オフィス移転のスケジュール


オフィスを移転する場合は、初めてオフィスを借りる場合とは異なり、今のオフィスの解約および退去と、新しいオフィスの契約および入居を続けて行う必要があります。そのため、いつ、何をするかといったスケジュール調整が大切です。

オフィス移転の際に必要な手続きと、スケジュールの目安は次のようになります。

オフィス移転~6ヵ月以上前

  • オフィス移転計画を立てる
  • 今のオフィスの解約通知時期を確認する(契約によっては6ヵ月以上前の場合がある)
  • 移転目的に応じたオフィス選びを開始する


3~5ヵ月前

  • 移転先のオフィスを決定する
  • 新しいオフィスのレイアウトや必要な什器の計画を立てる
  • オフィス引っ越し業者を決定する(繁忙期は早めに)


1~2ヵ月前

  • 取引先にオフィス移転の連絡をする
  • ホームページや書類、封筒などの住所変更の準備をする
  • 引越し準備を開始する


オフィス移転後

  • 以前のオフィスの退去確認をする
  • 原状回復工事をする(借主負担の場合)


オフィスの移転をスムーズに完了するためには、余裕のあるスケジュールを組むことと、やるべきことをひとつずつ確認しながら進めることが大切です。オフィス移転の間際になってあわてることがないよう、早めに準備に取りかかるようにしましょう。

オフィスのタイプや借り方はさまざま


オフィスの借り方には、一般的な賃貸オフィスだけでなく、レンタルオフィスやシェアオフィスなど多彩なタイプがあります。

移転先オフィスの選択肢を増やすためにも、それぞれのオフィスの借り方タイプについて把握しておきましょう。

一般的なオフィスビル賃貸

オフィスビルやテナントビルなどの一室を借りるタイプが、一般的なオフィスビル賃貸です。礼金や保証金を支払ってビルの所有者と賃貸借契約を結び、月々の賃料を支払います。保証金の代わりに賃料保証会社との契約が必須の場合も増えてきています。

一般的なオフィスビルの賃貸借契約では、部屋だけを借りることになるため、室内工事や必要な什器はすべて準備しなければなりません。同じ場所で長くオフィスを構える際におすすめの借り方です。

家具付きなどのレンタルオフィス

レンタルオフィスとは、一般的なオフィス賃貸とは異なり長期間の賃貸借契約ではなく、短期間のオフィスレンタル契約を結んで借りるというものです。

必要な什器も含めてレンタルする場合が多いため、引越しの手間や費用を抑えることができます。しかし、長期的にレンタル代を支払う場合、一般的なオフィスビル賃貸よりも高くなることもあるので注意が必要です。

スペースを共有するシェアオフィス

一般的な賃貸オフィスやレンタルオフィスとは異なり、シェアオフィスは、ほかの企業や個人事業主などと場所を共有するというオフィスの借り方です。それぞれのブースやスペースが決まっている場合もありますが、基本的にオープンスペースになります。

コピー機やプロジェクターなどの什器も共有で使えるため、オフィスにかかる費用を安く抑えることが可能です。しかし、プライバシーやセキュリティーが守られにくいというデメリットがあります。

住所だけを借りるバーチャルオフィス

バーチャルオフィスとは、その名の通り法人登記や会社の所在を示すために住所だけを借りるというものです。郵便物や荷物はその住所に届けられますが、仕事はほかの場所でする場合がほとんどです。

ネームバリューのある住所に格安で会社を構えられる点がメリットですが、来客対応がむずかしい点や郵便物の受け取りにタイムラグが生じる点などのデメリットがあります。

移転先オフィスの選び方

一般的なオフィスビルの賃貸の場合、移転先のオフィスに適しているかどうかをしっかりと確認しておかないと、入居してから後悔することにもなりかねません。そのような事態にならないためにも、移転先の賃貸オフィスの選び方やチェックポイントを把握しておくことが大切です。

ここでは、オフィス選びに大切なポイントについて詳しく説明します。どのような点に注意して選べば良いかをあらかじめ把握したうえで、新しいオフィス選びの際に役立てましょう。

建物のチェックポイント

まず、オフィスが入っているビルのチェックポイントについてみてみましょう。新しいオフィスの室内は入居後にリフォームすることも可能ですが、建物自体を変更することはできません。オフィスビルを選ぶ際には、立地や外観だけでなく、建物自体の構造や設備、管理状態などにしっかりとめを配ることが大切です。

耐震性

耐震性のチェックとして確認する点は、いつ建てられたかの築年数です。新耐震基準が適用されるようになった1981年以前に建てられたビルは、耐震性に不安や問題がある可能性があります。

ただし、1981年以前の旧耐震基準で建てられているビルであっても、耐震補強工事が施され、耐震基準を満たしていれば安心です。

インフラ

移転先のオフィスを選ぶ際には、インフラの確認も欠かせません。空調が電気なのかガスなのか、インターネット回線はどこまで引き込まれているのか、建物内にWi-Fiがあるのかなどを確認しましょう。

特にインターネット回線は、希望するプロバイダの回線を使う際には共用部分の工事が必要な場合があるため注意が必要です。

管理規約と管理状態

オフィスビル全体および室内の管理規約のチェックも大切です。仕事をするのが昼間だけでない場合、夜間の出入りや空調使用の可否の確認、室内に持ち込めないものがあるか、留守の際の荷物の受け取りがどうなっているかなどの確認もしておきましょう。

管理規約と合わせて、ビル全体の管理状況の確認も必要です。管理人が常勤なのか通いなのか、ゴミ置き場やトイレなどの清掃や管理などがきちんと行われているかなどがチェックポイントになります。

周辺環境と駐車場の有無

仕事で車を使うのであれば、駐車場の有無の確認も必要です。ビル内に駐車場がなければ、近くで借りられるかどうか、駐車料金はいくらぐらいかを調べておきましょう。

また周辺環境のチェックとしては、交通の便やコンビニエンスストア、飲食店の有無などがあげられます。静かな環境で仕事をしたいのであれば、高速道路や線路の側に建っているビルは、音や振動があるため避けるほうが良いでしょう。

ランニングコストのチェックポイント

次に、オフィスを維持するためのランニングコストの面のチェックポイントを確認しましょう。月々の差は僅かであっても、積み重なると大きな額になります。細かい点までチェックしておくことがおすすめです。

賃料と管理費に含まれる費用の確認

オフィスビルの賃料は、住居用の家賃とは異なり消費税が課せられます。また、一般的な管理費のほかに、共用部分の使用料やセキュリティー費、固定の水道料金などが別途かかる場合があるため、契約する前にあらかじめ確認しておくことが大切です。

光熱費の精算方法

空調費や電気代などの光熱費の精算方法のチェックもしておきましょう。オフィスビルによって、賃料と合わせて請求されるところや光熱費だけ別に振り込みしなければならないところがあります。また、空調に電気とガスを使っている場合、どのような割合での請求になるかも確認しておくようにしましょう。

賃貸借契約内容のチェックポイント

次に、オフィスビルを借りる際の賃貸借契約内容のチェックポイントについて説明します。
契約してから話が違うということがないように、これらのポイントは契約を締結する前にしっかりと確認しておくことが大切です。また、契約時の重要事項説明もきちんと行ってもらいましょう。

敷金(保証金)の取扱い

最近はオフィスビルの賃貸であっても、保証金を預けずに賃料保証会社と契約をすることが多くなりました。しかし、中には、契約時に賃料の1〜6ヵ月分の保証金を預けることが求められる場合もあります。

保証金は原則として退去時に返還されますが、契約内容によっては半額しか返還されなかったり退去時のクリーニング代や原状回復費が差し引かれたりする場合があるので注意が必要です。

内装工事の可否

入居後に応接室や会議室などを設ける予定であれば、室内工事がどの程度まで許可されるのかの確認もしておきましょう。オフィスビルによって、室内工事に寛容なところと厳しいところがあるからです。

壁で仕切った空間を作ろうとしても、管理規約で工事が許可されなかったり、消防設備の関係で天井まで仕切れなかったりすると、パーティションしか設置できないこともあります。予定していた工事ができない場合は、レイアウト変更も必要になることがあるため注意しましょう。

早期解約違約金の有無

オフィスビルによっては、1〜2年以内に解約をして退去する場合に、早期解約違約金を請求されることがあります。早期違約金の額は解約までの年数によって異なることが多いですが、1年以内の解約だと賃料の1~2ヵ月分が請求されることもあるので注意が必要です。

オフィスを退去する段取りになってから、早期解約違約金に気づくといったことにならないように、契約書の特約内容はしっかりと確認しておくようにしましょう。

退去時の原状回復について

退去時の原状回復の取り決めについても、契約時にしっかりと確認しておくことが大切です。原状回復工事は貸主と借主のどちらが行うのか、借主は原状回復にかかる費用をどの程度まで負担するのかなどのチェックが必要です。

一般的には事務所やオフィスなどの原状回復工事費用は借主が負担することがほとんどです。しかし、小規模な事務所やオフィスであれば、国土交通省が公示している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に基づく場合もあります。内容を一読しておくと良いでしょう。

入居時と退去時のトラブルを回避するために


今までのオフィスの退去時と、新しいオフィスの入居時におけるトラブルは、できるだけ避けたいと考える方がほとんどでしょう。
最後に、オフィスの入居時と退去時のトラブルを回避するいくつかのポイントをご紹介します。

室内の採寸は徹底的に行う

移転先にふさわしいオフィスが見つかったら、契約前に室内の採寸を徹底的に行っておきましょう。採寸の際には、壁の長さだけでなく、天井の高さや出入り口の幅、天井や梁の部分なども忘れずに測っておきます。

室内の採寸は、オフィスのレイアウトを決める際に必要です。引越し時にキャビネットや本棚が入らないといったことにならないよう、室内の写真を撮りながら採寸すると良いでしょう。

荷物搬入時のエレベーター利用の確認

オフィスビルにエレベーターが一台しかない場合、引越し作業でエレベーターを使うことで、ほかの入居者から苦情が出てトラブルに発展する恐れがあります。

そのような事態にならないためにも、引越し時や荷物の搬入時のエレベーターの利用については、管理人や管理会社に確認をして、必要に応じてほかの入居者に知らせておいてもらうと良いでしょう。

内装工事の許可と日程調整

移転先のオフィス入居時に、室内工事の予定がある場合は、あらかじめビルの管理会社から工事の許可を得ておくようにしましょう。工事の申請には、工事の予定図面と工程表が必要になります。内装工事業者に依頼をして、準備しておきます。

特に大きな音が出る工程がある場合、隣上下の部屋の入居者に許可をとっておくことがおすすめです。ほかの部屋で来客やセミナーなどの予定がある場合は、その日程を外して室内工事の予定を立ててもらいましょう。

入居時に室内の撮影を忘れない

将来、退去する際に備えて、入居時には室内の状態を細かく撮影しておくようにしましょう。特に室内に汚れや傷、不具合などがある場合は、それが入居時からのものであることを証明するために日付がわかる画像で残しておくことが大切です。

入居時、すでにあった汚れや傷であるにもかかわらず、それを証明することができなければ退去時に余分な原状回復費を請求されてしまう恐れがあります。什器を運び込む前に、ぜひ実施しておきましょう。

オフィス移転を成功させるには選び方が肝心

オフィスの移転は日常の業務を続けながら行うことがほとんどです。そのため、スケジュール調整や手続きなどに忙殺され、肝心のオフィス選びがおざなりになったり不動産会社に任せになったりしてしまうことがあります。しかし、快適に仕事ができるオフィスは仕事の効率や業績アップにつながるため、十分に検討して選ぶことが重要なポイントです。

オフィスの移転を成功させるには、しっかりと計画を立てて余裕のあるスケジュールを組むことだけでなく、オフィス移転の目的に合った新しいオフィスを選ぶことが重要になります。オフィス移転の目的を満たすオフィスの借り方やタイプを選び、新しいオフィスを選ぶ際の注意点をしっかりと把握したうえで、オフィスの移転作業をスムーズに完了させましょう。

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(編集:創業手帳編集部)