オフィス移転にかかる費用は?概算から内訳、会計処理、勘定科目まで紹介!

オフィス移転費用がいくらになりそうか、費用の内訳や目安、経費計上時の勘定科目までわかりやすく解説

オフィスの移転計画を立てる際に、気になることの一つが移転にかかる費用です。オフィスの規模によって移転に必要となる費用は大きく異なりますが、小規模なオフィスであってもさまざまな費用が必要になることは言うまでもありません。

オフィス移転を成功させるためには、移転費用にはどのようなものがあり、またいくらぐらいになりそうかをあらかじめ把握しておくことが大切です。この記事では、オフィス移転にかかる費用について詳しく説明します。経費計上する際の勘定科目も併せて説明するので、オフィス移転の計画を立てる際に、ぜひ役立ててください。

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オフィス移転にかかる費用一覧


まず、オフィスを移転する際に必要となる費用を一覧にまとめました。どこで、どのような費用がかかるのかを大まかに理解しておくと、移転の際にかかる費用の流れが把握しやすくなります。

現在のオフィスの退去にかかる費用
・原状回復費用

新しいオフィスの入居にかかる費用
【賃貸借契約関連費用】
・敷金(保証金)
・礼金
・保証会社契約費用
・各種保険料
・不動産会社への仲介手数料
  
【新しいオフィスの準備費用】
・内装工事費用
・オフィス家具、什器購入費用

オフィス移転・引越し作業にかかる費用
・運送・引越し費用
・廃棄物処理費用
・届出や移転通知費用

では、それぞれの費用の内訳と内容について、どれくらいかかるのか、どのような点に注意すれば良いのかなどを詳しく見ていきましょう。

現在のオフィス退去にかかる費用の内訳


まず、現在のオフィスを退去する際にかかる費用を説明します。オフィス退去時に必要になる費用のメインは、原状回復費費用です。ここでは、オフィス退去時にかかる原状回復費用について、詳しく説明します。

原状回復費用

オフィス退去時の原状回復とは、借りていたオフィスの室内を賃貸借契約書で定められた状態に戻すことです。入居時の状態に戻すと定められていることが多いですが、契約内容によっては、貸主との協議で内装や設備を残したまま退去できる場合もあります。

原状回復工事の費用は、これも契約内容によりますが、退去する借主が負担することがほとんどです。しかし、工事を依頼する業者は貸主側の指定があったり事前に業者の許可が必要だったりするため、あらかじめ確認しておくようにしましょう。

入居していた期間や内装工事をどの程度していたかにもよりますが、一般的なオフィスの原状回復費用は、1平方メートルあたり1万円程度です。ただし、壁を造作して部屋を仕切っていたり照明器具や空調設備などを変更していたりした場合は、1平方メートルあたり2~3万円以上かかることもあります。

新しいオフィス入居時にかかる費用の内訳


次に、新しいオフィスの入居にかかる費用について詳しく説明します。オフィス移転の際にかかる費用のうち、新しいオフィスにかかる費用の割合は大きいです。

しかし、その分工夫次第で費用を抑えられるものもあるため、オフィス移転にかかる費用を節約したい場合は、新しいオフィスの入居にかかる費用を見直してみると良いでしょう。

ここでは、新しいオフィスの入居時にかかる費用について、詳しく説明します。

賃貸借契約関連費用

まず、新しいオフィスを借りるためにかかる費用についての説明です。物件の広さや賃料の坪単価、賃貸借契約の内容により、これらの費用は大きく異なってきます。それを踏まえた上で、どのような費用がかかるのかを確認していきましょう。

敷金(保証金)・礼金

賃貸オフィスの賃貸借契約を結ぶ際に、必要な費用の一つとして挙げられるのが「保証金」です。保証金は、万が一、借主が賃料を滞納したまま行方不明になった場合などに備えるもので、賃貸住宅の敷金と同じような役割を持っています。

賃貸オフィスでは、保証金は賃料の3カ月~6カ月分の場合が多いです。保証金の額だけでなく、退去時にどのような扱いになるかもチェックしておきましょう。

保証金は、原則として退去時に返却されるお金ですが、契約内容によっては原状回復費を差し引かれたり保証金償却でいくらかが返還されなかったりすることがあります。契約時は、保証金の取り扱いについてもしっかりと確認しておきましょう。

礼金は補償金とは異なり、貸主に対して支払う謝礼や契約手数料のようなものなので、退去時に変換されることはありません。相場は賃料1カ月~3カ月分の場合が多いですが、賃貸オフィスの場合だと礼金がない物件もあります。

保証会社契約費用

賃料保証会社とは、借主が賃料の支払いが滞った際に、貸主の要請に従って保証会社が代位弁済をして賃料を支払うというものです。保証会社が代位弁済した分は、手数料を加えて保証会社から借主に請求されます。

以前、法人が賃貸オフィスを契約する際は、連帯保証人を付けるだけの場合が多かったのですが、現在では、保証会社との契約を借主に義務付けているケースが多いです。

保証会社との契約費用は保証会社によって異なります。初回契約時に共益費などを含めた1カ月分の賃料総額の50~100%程度を支払い、入居後は毎年の更新料として1万円~賃料総額の10%程度を支払い続けるケースがほとんどです。

保証会社は、一般的に貸主から指定されるため、借主が選ぶことはできません。賃貸借契約を結ぶ前に、保証会社の利用が必須なのか、契約費用や契約更新料はいくらかかるのかを確認しておきましょう。

火災保険料

新しいオフィスの賃貸借契約を結ぶ際は、火災保険の加入も必要です。加入する火災保険会社は、貸主が指定する場合と借主で選べる場合があります。契約前に確認しておきましょう。

保険の内容は、火災保険のほかに地震保険や借家人賠償責任保険があります。借家人賠償責任保険とは、自室の水漏れや火災などでほかの入居テナントに被害を与えた際に補償してくれるというものです。賃貸ビルによっては、借家人賠償責任保険への加入も必須になっている場合があります。

火災保険料や地震保険料などの額は、補償額によって決まります。一般的な事務所であれば数百万円の補償で十分ですが、特別な機器や設備といった高額なものを置いている場合は、高い補償額が必要です。それに伴い、保険料も高くなります。

不動産会社への仲介手数料

不動産会社の仲介で新しいオフィスを探してもらい契約が成立した場合は、仲介手数料の支払いが必要です。仲介手数料の額は、宅地建物取引業法で上限額だけが定められているため、その範囲内であれば不動産会社が自由に設定できます。

賃貸契約の場合、仲介手数料として請求できる上限額は賃料の1カ月分です。多くの不動産会社は、この全額を借主に請求しています。しかし、不動産会社の中には、仲介手数料の割引や半額、無料のところがあるのも事実です。そのような不動産会社は、貸主からの広告料などで利益を得ています。

不動産会社に物件探しや紹介を依頼する際は、前もって仲介手数料の額を聞いておくと良いでしょう。

新しいオフィスの準備費用

オフィス移転の際には、新しいオフィスの準備費用も必要です。ここでは、新しく借りたオフィスで滞りなく業務を開始するために必要な準備にかかる費用を説明します。

内装工事費用

新しく借りたオフィスをそのまま使う場合もありますが、内装工事が必要な場合もあります。その際には、内装工事費用が必要です。借りた時点でのオフィスの状態や内装工事の内容によって費用は大きく異なります。

中規模や小規模のオフィスの場合では少ないですが、スケルトンと呼ばれる内装がまったく施されていない状態からの工事だと、高額な内装工事費用が必要です。坪30万~40万円以上かかることもあります。

一般的なオフィスの内装工事であれば、坪5万~10万円程度です。ただし、天井を抜いたり壁やドアを作ったりする場合は、費用が高くなります。あらかじめビルの貸主や管理会社にどの程度までの工事が認められるのかを確認しておきましょう。

また、内装工事を依頼する業者が決まっていない場合は、複数の業者から見積もりを取って比較をすることも大切です。費用の額だけでなく、工事内容やアフターサービスの比較もしましょう。

オフィス家具・什器費用

現在のオフィスで使用しているデスクやオフィス家具をそのまま新しいオフィスで使う場合も多いですが、オフィス移転に伴って新しいオフィス家具や什器を整える場合もあるでしょう。そのような場合は、新しいオフィス家具の購入費も必要です。

新しく購入するデスクや家具のグレードにもよりますが、一般的なものを購入した場合、一人あたり10万円~20万円程度かかります。昇降機能が備わったデスクや高機能の椅子などを揃えると、より高額の費用が必要です。

新しいオフィスへの移転目的と予算、使い心地などを擦り合わせた上で、新しくするものと使い続けるものとの判別をするようにしましょう。

オフィス移転・引越しにかかる費用の内訳


最後に、オフィス移転や引っ越し作業にかかる費用について説明します。これらの費用は、業者に依頼する内容やボリューム、時期などによって大きく異なるため、目安や相場を立てることがむずかしい費用です。ここで紹介する内容は、あくまでも目安であることを前提として参考にしてください。

運送・引越し費用

現在のオフィスから新しいオフィスへの引越し費用や荷物の運送費用は、社員一人あたり3万円程度かかると言われています。処分するものが多かったり荷物が少なかったりする場合だと安くなりますが、ほとんどすべてのオフィス家具を運んだり資料などが多かったりすれば、それだけ高い運搬費用が必要です。

また、現在のオフィスや新しいオフィスにエレベーターがない場合やビルの横にトラックが付けられない場合などは、引越し費用が割り増しになることがあります。あとから料金を追加されることがないよう、見積もりの際には状況をきちん確認してもらいましょう。

廃棄物処理費用

オフィス移転に伴って出る廃棄物の処理にも費用がかかります。オフィスの廃棄物は事業用として処理する必要があるため、専門業者への依頼が必要です。

廃棄物として処理するものによって費用は変わりますが、1.5トンのトラックで運べる程度の量だと、5万円~7万円程度かかります。状態の良いオフィス家具であれば、リサイクル業者が無料で引き取ってくれる場合もあるので、一度、調べてみるのがおすすめです。

届出や移転通知費用

法務局や税務署などの官公庁にオフィスを移転した旨を届け出る際の大きな費用は、法人登記の変更で必要となる登録免許税です。移転先のオフィスと今のオフィスとの管轄が同じ法務局であれば3万円、法務局が変わる場合は6万円の登録免許税がかかります。

そのほかの届出自体には、ほとんど費用はかかりません。ただし、社会保険労務士や税理士に届出の手続きを依頼した場合は、その分の報酬が必要になります。

また、新しいオフィスの住所や連絡先を入れた名刺や封筒などの製作費用が必要です。会社のホームページの作成や管理を外注している場合は、変更で料金が必要になる場合もあります。前もって確認しておきましょう。

オフィス移転にかかる費用の会計処理と勘定科目


ここでは、オフィス移転にかかる費用を会計処理する際の手続きや勘定科目について説明します。オフィス移転は、そう何度も行われるものではないため、かかった費用をどのように経費計上すればよいか迷うこともあるでしょう。あらかじめ、オフィス移転費用の振り分け方などを確認しておくと安心です。

オフィス移転費用は「雑費」がメイン

オフィス移転費用にかかる費用のほとんどは「雑費」として上げることが可能です。あとで説明するもの以外でオフィス移転にかかった費用は、ほとんどが雑費になります。

オフィス引越し業者や移転業者への支払いは、雑費にするだけでなく「支払手数料」や「荷造運賃」といった勘定科目にすることも可能です。どの勘定科目に入れるかわからない費用は、内容を明確にして雑費として計上すると良いでしょう。

原状回復工事費用は「修繕費」

現在のオフィスを退去する際にかかる原状回復費用は、「修繕費」として計上します。

ただし、保証金の項目で説明した通り、オフィスの賃貸借契約を結んだ際に預けた保証金から原状回復費用が差し引かれて返還される場合があります。そのような場合は、借方に修繕費と記入し、貸方に補償金または差入保証金の勘定科目を使って処理するのが一般的です。

また、同じ工事費用でも、新しいオフィスの内装を工事した分は資産になります。そのため、減価償却が可能です。一般的な内装工事費用であれば、10年~15年程度で減価償却を行うことになります。

仲介手数料などは「支払い手数料」

新しいオフィスを契約する際に不動産会社に支払った仲介手数料は、「支払い手数料」で計上します。しかし、必ずしも支払い手数料にしなければならないわけではありません。オフィス移転は定期的に行われるものではないため、ほかの費用と同じように、「雑費」として計上することも可能です。

保証金・敷金は資産になる

オフィス移転費用の際にかかる費用のうち、保証金は退去時に返還されることが前提となっているため、通常、経理上では資産として扱います。

ただし、返還されない礼金は、20万円以上の場合は5年間の「長期前払い費用」として均等償却し、20万円未満の場合は「地代家賃」科目として一括償却するのが一般的です。

オフィス移転費用を安く抑えるには?


最後に、オフィス移転にかかる費用を安く抑えるためのポイントをいくつか紹介します。いずれも必ず実行可能であったり効果が期待できたりするとは限りませんが、試してみる価値はあると言えるでしょう。少しでも移転費用を抑えたい場合は、ぜひ参考にしてください。

繁忙期を避ける

オフィス移転は、年度替わりが過ぎた4月から5月頃に行われることが多いです。そのため、その頃の移転業者は繁忙期となり、費用が高くなる恐れがあります。費用を抑えたいのであれば、その時期は避けるほうが賢明でしょう。

反対に、8月や2月といったオフィス移転があまり行われない時期を狙うと、値引きしてもらえる可能性が高くなります。通常業務に差支えがないのであれば、オフィス移転業者や引っ越し業者の繁忙期を避けて移転計画を立てることがおすすめです。

フリーレントを交渉してみる

フリーレントとは、賃貸借契約の締結後、賃料が発生しない期間を設けるというサービスです。新しいオフィスの契約をする際に、フリーレントをつけてもらえるよう交渉してみても良いでしょう。

通常、新しいオフィスの契約から入居まで数ヵ月かかります。できれば、その期間をフリーレントにしてもらえるかどうか、それが無理な場合は、1、2ヵ月分のフリーレントをつけてもらうだけでも費用はかなり違ってくるでしょう。

依頼業者をまとめて値引きしてもらう

オフィス物件の仲介をしている不動産会社やオフィス家具会社などのなかには、オフィス移転サービスを行っているところがあります。そのようなところに一括でオフィス移転業務を依頼すると、安くなる場合もあるので検討してみても良いでしょう。

また、オフィス移転業者の一括査定サイトを利用するのも一つの手です。いくつかの業者を選定したら、それぞれから見積もりを出してもらい、内容と金額を比較してから決定することをおすすめします。

オフィス移転費用を抑えるには工夫が大切

オフィスの移転には、規模の大小に関わらずさまざまな費用がかかります。特にかかるのは、新しいオフィスの入居の費用です。あらかじめ、どのような費用がいくらぐらいかかるのかを試算しておき、オフィス移転の予算を立てておくようにしましょう。

オフィス移転にかかる費用を抑えるには、繁忙期を避けたり新しいオフィスの契約時にフリーレントを交渉したりするなどの方法があります。また、オフィス移転業者や内装工事業者を選ぶ際に、複数の業者から見積もりを取って比較することも大切です。オフィス移転費用の予算が決まっている場合は、いろいろ工夫をして予算内に収めるようにしましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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